「J-SOX の評価作業、毎年この時期が一番つらい」——内部監査部門や会計事務所の担当者なら共感するはずだ。その課題に対し、国内最大規模の監査法人が数字で答えを出した。

有限責任監査法人トーマツが2026年5月末に公表した効果検証によれば、独自開発の 内部監査・J-SOX(金融商品取引法に基づく内部統制報告制度)評価 AI エージェントを20件に適用した結果、証憑の評価実施・調書作成の業務工数を50%以上削減することが確認された。

何が変わったか:Omnia × AI エージェント

トーマツは独自の監査プラットフォーム「Omnia」(全監査業務を一元管理するデジタル監査基盤)にAIエージェントを搭載し、2025年10月より監査調書のレビュー支援を開始している。現在は約 4,000人以上が日常利用しており、最終的に約 5,000人規模の会計士・スタッフへの展開を想定している。

AIエージェントが担う主な業務は以下の通り:

業務フェーズAIエージェントの役割
リスク評価企業・業界・勘定残高データを横断分析
内部統制評価(J-SOX)標準手続に基づく証憑評価の自動化
監査調書作成レビュー指摘事項の整理・調書ドラフト生成
監査知見の調査会計基準・社内ナレッジのRAG検索

J-SOX担当者が注目すべき3つのポイント

① 20件の実証で「50%超削減」を確認

「AI導入で効率化」という主張は多いが、20件の現場適用で定量効果を検証している点が異なる。特に J-SOX 評価の各統制における「証憑評価実施」と「調書作成」の 2 フェーズが対象で、人が最も時間を取られていた工程を直撃している。

② RAG技術で会社固有の「暗黙知」を活用

単純な生成 AI ではなく、社内の監査知見データベースに接続した RAG(検索拡張生成) を採用。「この業種・この勘定科目ではどう判断するか」という蓄積ノウハウをエージェントが参照しながら調書を作成するため、画一的な出力にならない点が実務上のポイントだ。

③ 監査全工程への段階展開

今後は監査計画・データ準備・実証手続・結果報告まで全工程への AI 導入を進める方針。J-SOX 評価だけでなく、四半期レビューや年次監査の主要プロセスが自動化対象に入ってくる。


会計事務所・経理部門へのインパクト

トーマツの動向は業界標準を引き上げる可能性がある。監査法人が AI エージェントで工数を圧縮すれば、監査報酬の見直し・要求品質の高度化・短縮スケジュールという形でクライアント企業にも影響が波及してくる。

内部監査部門にとっては「監査法人と同じ AI を使いこなせるか」が問われる局面だ。


まとめ:今週のアクション

  • 内部監査部門: J-SOX 評価の AI 自動化を来期計画に盛り込む検討を開始
  • 会計事務所: Omnia 連携・AI エージェント対応の可否をクライアントに確認
  • CFO・経理マネージャー: 次回の監査法人との打ち合わせで AI 活用状況をヒアリング

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